ガン組織イメージング装置

概要
本システムはハイブリッドリポソームがガン細胞のみをターゲットとして特異的に融合するメカニズムを研究するために、生体組織のイメージングを行う装置です。蛍光試薬NBD含有ハイブリッドリポソームのガン組織への集積度を高感度CCDカメラで検出することができます。またガン組織が皮膚や粘膜の下に存在した場合、どのくらいの深さまでNBD含有ハイブリッドリポソームの観察が可能かなどの確認ができます。さらにガン組織と正常組織との蛍光量の差の確認、自家蛍光の排除の確認、どれくらいの小さなガン組織まで検出可能かなどのテストが行えます。

システム構成
本システムは以下の各ユニットにより構成されます。
1)試料観察光学系及び励起光照射光学系
2)蛍光イメージ観察用光学系
3)蛍光イメージ集光光学系及び蛍光検出用(励起光除去用)フィルター
4)高感度CCDカメラ(浜ホトC9100-13)
5)データ解析装置(制御用PC)及び画像解析ソフトウエア
6)多関節導光アーム
7)試料台
8)筐体
9)深さ方向観察用共焦点光学系(オプション)

3.各部の仕様と機能
3.1 試料観察光学系及び励起光照射光学系

本ユニットは試料組織の観察及びガン組織に取り込まれた蛍光試薬NBD含有ハイブリッドリポソームの励起を目的として構成され、機能します。
1)試料観察光学系:白色LED及び小型CCDカメラにより試料画像観察。画像はPC画面でビデオイメージとして観察。
2)励起光源:高出力460nm発光ダイオード
3)照射光学系:対物レンズにより試料組織にフォーカスし、照射。
4)ダイクロイックミラー:励起光を反射し、蛍光を透過しやすいダイクロイックミラーを用いる。

3.2 蛍光イメージ観察用光学系
本ユニットは試料組織からの蛍光イメージを対物レンズにより集光し、多関節導光アームに導入します。
1)対物レンズ:倍率20X及び40Xを交換して用います。

3.3 蛍光イメージ集光光学系及び蛍光検出用フィルター
本ユニットは多関節導光アームを通して本体に導かれた蛍光イメージ光から460nmの励起光を除去し、高感度CCDカメラに結像します。
1)蛍光イメージ集光光学系
2)シャープカットフィルター(500nm)
3)ホルダー

3.4 高感度CCDカメラ
試料組織の蛍光イメージを高感度で検出します。画像データは制御用PCに転送されます。
1)CCDカメラ:浜松ホトニクスC9100-13
2)CCDカメラコントローラ

3.5 データ解析装置(制御用PC)及び画像処理ソフトウエア
1)CCDカメラの制御を行い、蛍光画像を取得します。
2)画像処理を行います。

3.6 多関節導光アーム
試料組織からの蛍光イメージ光を高感度CCDカメラに導入します。各関節部にはミラーがセットされイメージ光は平行光束として導入されます。各関節部は360度回転し、観察部位を自由に決めることができます。

3.7 試料台
試料組織を載せるXYZステージです。 多関節導光アームで試料組織のどの部分を観察するか大まかに決め、その後XYZステージで試料を動かし、正確に観察位置とフォーカス位置を決めます。

3.8 筐体(ブロック図参照)
筐体には高感度CCDカメラ、試料台及び多関節導光アームが設置され、試料組織からの蛍光をイメージ集光光学系を通してCCDカメラに結像します。励起光からの散乱光や外乱光が微弱蛍光検出に妨害とならないように遮光板及びケースを取り付けます。

3.9 共焦点光学系(オプション)
皮膚の下のガン組織からの蛍光イメージをとらえる場合、表面組織からの妨害を少なくする必要があります。そのために共焦点光学系を設けることができます。一定の深さからのイメージ光のみが透過するようにピンホールを設け、その他の深さからの光はカットします。CCDカメラの前のイメージ集光光学系の中に設置します。

ガン組織イメージング装置ブロック図
ガン組織イメージング装置ブロック図

多関節導光アーム
(補足説明)
1.多関節導光アーム
多関節導光アームは下の写真ような構造です。これは形成外科、美容外科、皮膚科などで用いられている「CO2レーザー手術装置」です。

多関節導光アーム2
この先端に試料観察光学系(観察用小型CCDカメラ、白色LED)、励起光照射光学系(照射用460nmLED,対物レンズ)などのブロックがつきます。写真よりかなり大きくなります。

2.試料観察部位の位置決め
試料観察の倍率に「細胞レベル」を要求すると対物レンズの40倍以上が必要になります。このくらいの倍率の対物レンズを使うとXYZとも微調整機構が必要です。その位置決めを多関節導光アームのマニュアル操作に要求するのは困難だと思われます。従って試料台に自動あるいはマニュアル操作(マイクロメータ付)のXYZステージを使う必要があると思われます。多関節導光アームに対物レンズを取り付け、さらにそれに微調機構を取り付けることも可能ですが、アームの先端が重くなり、安定性に不安が残ります。

3.多関節導光アームと光ファイバー
多関節導光アームの代わりに画像伝送用光ファイバーを用いることも可能ですが、試料観察光学系と励起用の照射光学系を現在使用されている「内視鏡」程度に小さくすることは非常に困難です。両者とも本体(手元)に設置して光ファイバーを通して観察したり、励起したりすることも可能ですが、効率が大きく落ちます。

4.共焦点光学系
皮膚の下の状態を見るには対物レンズの焦点位置を皮膚下に合わせ、表面の妨害を除く必要があります。蛍光イメージ観察用高感度CCDカメラの前にピンホールを持った共焦点光学系を設置し、焦点位置以外のイメージを除きます。

5.自家蛍光の除去
蛍光試薬NBD含有ハイブリッドリポソームが取り込まれなくても発光する組織からの蛍光を除去する方法を検討します。NBDの励起光依存性および特異的な蛍光スペクトルを応用してそれが可能かどうかを実験するため、励起光に460nm以外の波長及び530nm以外の蛍光イメージが取得できるようにLED及びフィルターが交換可能とします。

6.装置全体の様子
装置全体は事務机のほぼ半分程度の大きさ(横幅700x奥行き600x高さ1100mm)になると思います。キャスター付で搬送可能ですが、微弱蛍光を検出するため、試料組織のまわりは外の光が入らないように遮光が必要です。また、試料組織(励起光)側と検出用高感度CCDカメラは仕切がある別な場所に設置した方が励起光の回り込みが少なくなると思われます。

以上

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